Journey of Nobel Prize for Medicine

ノーベル生理医学賞のすべてを少しずつ追う旅

主要死因の変遷 _ ~2000年

[project A では、疾患についての説明を軸として展開します。生命科学の知識を応用して記述できるようになることを目的に、その概要を記します。そのため、臨床的な医学アドバイスを行うものではありません。

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1950年代までに感染症を予防できるようになると、その下に潜んでいた死因や、潜在的な死因となりうる疾患が台頭することになる。

代表的なものは、50年代から急増した脳血管疾患である。また、80年代からは悪性新生物が集団の中でもっとも大きな割合を占める疾患となった。心疾患が悪性新生物と平行するかのように二位に付けている状況で今日に至る。

はじめに、心疾患と脳血管疾患を取り上げる。

原因として、食生活の変化とライフスタイルの変化が重要である。これは必然的な帰結で、高エネルギーで高脂質な食事を採れば、肥満や高脂血症を招き、結果として動脈硬化を引き起こす。血管が詰まるという大血管障害 macroangiopathyをもたらし易い。これは社会が裕福に変化することでもたらされているのである。その証拠に、本来であれば心疾患も脳血管疾患も、慎ましやかな生活で予防することが可能なのにも関わらず、死亡率が上昇している(1)。

つまり、2000年以降の医学の課題とは、これらを解決するためのメタボリズムの研究であるということだ。高カロリーをとり、通信技術の発達により高ストレスにさらされる生活が続き、代謝が乱れている。タンパク質ばかり採るようにとか、脂質は採っても炭水化物は採らないとか、様々なダイエット法の情報ばかり溢れている今日はあまりよろしくない。的確にメタボリズムを制御できる医学があって良いし、そのためには生化学の手法で代謝動態を詳しく研究する必要があるだろう。(2)

悪性新生物については、年齢調整後の死亡率は、実際には横ばいである(1)。

年齢調整死亡率 age-adjusted mortality rateとは、母集団における年齢分布を考慮する計算方法による算出値である。

年齢分布を考慮しない計算方法の場合、通常の死亡率の計算になり、

MR = q / N

ここで、qは全体の死亡数で、Nは母集団なので全ての年齢の人間の総数である。

年齢調整をかける場合には、世代ごとの死亡数があるので、

ade-adjusted MR =  ¥frac {1} {N} ¥Sigma_{i=1}^{k}  n_i ¥times p_i

ここで、pは死亡率を示す。最高齢もしくは最高年代の世代を、n=1からn=kまでで設定しているのである。 ¥Sigma_{i=1}^{k}  n_i =N である。(3)

補正する前と後では以下の違いがある。年齢調整後の死亡率が横ばいであるという事実は、悪性新生物が占める死因割合の上昇は、高齢化であるということを意味している。

この高齢化が重要で、50年代以降の疾患とは高齢化によって顕在化してきた疾患が占めている。その証拠として、80年代以降から肺炎による死亡率が再上昇していることがわかる。これは、主に誤嚥性肺炎の確立が高齢者になるほど上昇するからである(4)。他にも、高齢では肺炎の初期症状である熱や咳、痰の症状が顕在化しにくいため、診断した時にはすでに重症化しているケースが多くなる(4)。

つまり、2000年以降の医療の課題は、高齢者への的確な医療提供システムを構築することである。

ちなみに、肺炎による死亡者が上昇している現状への対策として、日本では2014年10月より、高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種の制度が導入される。

Ref.

1, http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2080.html

2, James Watsonの知見に拠る。詳しくは『知の逆転, 吉成真由美ほか, NHK出版新書, 2012』の項中を参照のこと。

3, http://ja.wikipedia.org/wiki/年齢調整死亡率

4, http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2014/M47360261/